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がんばれ!日本在住ベトナム人
ベトナムに夢をかけた日本人たち
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ベトナムに夢をかけた日本人たち

第 1 回 : 秋末義郎さん

-ロコファクトリーはベトナムで頑張っている日本人を応援します-


今回から始まりますこのコーナーにお招きした秋末社長との出会いは、私がホーチミン市で美容室を営んでいた頃でした。「住まわれているお客様のプラスになる企画であれば」と言って、美容室で催すイベントのチラシを快く預かっていただいた事を鮮明に覚えてます。クリスマスの装飾に彩られたサイゴン・スカイガーデンでお出迎えいただいた秋末社長は、その頃と変わりなく生き生きとされてました。

d1_1.jpg 名前  :秋末義郎さん
年齢  :61歳(2010年現在)
出身地  :関西 (現在は千葉県)
職業 :サイゴン・スカイガーデン社長
初めてのベトナム:1998年
ベトナム在住年数:6年(2010年現在)
ベトナム在住地 :ホーチミン市



「みんながHappyになるために、あなたは何をするべきか?」


松:秋末社長、ご無沙汰してます。
今日は私どもロコ・ベトナムの「ベトナムに夢をかけた日本たち」という企画のインタビューでお伺いしました。

秋:はい、よろしくお願いします。
お会いするのは1年半ぶりくらいかな?
本当に久しぶりだね。

松:年輪がひとつ増えましたね、お互い(笑)
早速ですが、「サイゴン・スカイガーデン」についてお話し願えますか。

秋:サイゴン・スカイガーデンは、ベトナムの建設会社と日本の商社が合弁で作った会社でして、投資許可がおりた1995年から建設にとりかかり、完成後の1998年より外人向けのサービスアパートメントを運営しております。

松:日本人には「サービスアパートメント」という言葉はあまり馴染みがないですよね?

秋:そうかもしれませんね。 ここ25年くらいかな...。どちらにしても東南アジアの国々では、この概念は新しいと思いますよ。サービスアパートメントというのは、賃貸のアパートにホテルの機能を加えたイメージです。具体的にはホテルにキッチンやリビングなどの生活空間を加え、住まい全体を広くした感じです。勿論、ベッドメーキングやランドリーなども請負わせていただいてます。

松:社長!私はハワイも大好きなんです。一生に一度はハワイ生活もしてみたくて...

秋:はっ?

松:あっ!いえ...
「ハワイに行った際にはコンドミニアムを利用することがあるんですが、それとは違うんですか?」と、本当はお聞きしたかったんです(笑)

秋:コンドミニアムは日本で言うマンションで、個々の物件(部屋)にそれぞれ所有者がいます。そこに同様のサービスやセキュリティーなどが加わっているという感じでしょうか。どちらにしても単身者が鞄ひとつでやってきても、その日から何不自由なく生活ができます。

松:なるほど。サービスアパートメントの事がよくわかりました。
では初めに、ベトナムについてお聞きしたいんですが、初めてここの来る前のベトナムのイメージって、どんなでしたか?

秋:「水牛が居て、田畑を一生懸命耕している東南アジアの人々がいる」というイメージでした。あとですね、物資もままならない中で、戦争という悲惨から自国を守り抜いたすごい国だとも思っていました。

松:実際にベトナムに来てみて、ベトナムはどんな国でしたか?

秋:1998年頃におこったアジア通貨危機で、渡越した矢先に往復ビンタで叩かれたような感じでした。多くの企業がビジネスの対象からベトナムを外したくらいでしたから、滅茶苦茶にしんどかったですよ。同じように進出された方々は本当に大変な苦労をされたと思います。5年で利益を出すという考えよりも、いかに赤字を少なくするかといった具合だったと思います。

松:言わば日本人にとって難しい国に、一番大変な時期に進出されたのだと思いますが、現場での苦労も計りしれなかったんでしょうね?

秋:ベトナムの方は勤勉なのですが、英語や日本語が分かる人はホーチミン市などの都市部に少々いるだけだし、その語学力も十分なコミニュケーションを取れるに至らなかったんですね。ましては田舎の方なんて、ほとんどベトナム語しか通じないような状態だったと思いますよ。そんな状況下でベトナム赴任を伝えられた会社勤務の方が、日本と同じようにやれと会社側から言われても、日本のように確立されたベースがここには無いんだからできる訳がないんですよ。

松:身にしみてわかります(苦笑)
みなさん、どのように問題を解決していったんですか?

秋:まず、日本のシステムを現地に合う形に変えることから始めました。次に、そのシステムを従業員に教えるベトナム人のリーダーを育てるんです。

松:外国の方に日本のシステムを教えていくのは並大抵のことではないですよね。
ちなみに、ベトナムの方々と接してきて、日本人との違いは感じられましたか?

秋:共通点もたくさんありますが、あくまでも個人的な評価で言わせていただければ、東南アジアの中でベトナムの人々への評価は高いです。基本的には貧しくてもコツコツと勤勉にやり、目標させしっかり定めて、どのようにやれば上手くいくのかという事を理解できれば彼らはきちっとそれをやりとげますよ。しかし、あくまでも理解しているかどうか、確認しなければなりませんよ。理解していると思い込んだあげく、上手くできなかった事に対し彼らを怒っても、ただ反感をかうだけです。あとは、個人プレイというより、組織化することが有効な場合があります。皆で力を合わせて落伍者が出ないように、一致団結して頑張るとった風潮があります。

松:何かエピソードがありそうですね。

秋:アオザイってありますよね?あれは全身くまなく採寸するんですが、出来上がりのサイズが少しでも合わなければ、お客さんの満足がいくまで何度でもやり直してくれます。勿論、料金は変わりません。日本だったら、なかなかそうはいかないでしょう。ベトナムの方は、忍耐強いんでしょうね。クチトンネルなどに行くと分かるように、一致団結してあの狭い地下要塞を定宿にして戦ったのですから。まぁ、逆に一度決めた料金は、まとめて買っても安くなる事はあまりないかもしれません。「ひとつの単価×3。それで終わり!」みたいな(笑)。たさくん買うんだから、安くしてくれてもよさそうなもんですがね。買い物の際にお店の人とのやりとりが楽しめるところなどは、大阪と似ているかもしれません。

松:そんなベトナム人の方々と一緒に仕事をする上で必要な事って何ですか?

秋:「日本の常識は世界の常識では無いんだ」と、まずは理解して欲しいです。日本の文化、世界の文化、ベトナムの文化、みんな生きてきた環境が違うから、物事に対する解釈がバラバラなんですよ。しかし日本人にとっては、日本文化や日本の社会環境が基盤であり、それがベトナムでも判断基準となっていることが多いです。だから、ベトナム人の方にものを話す際も、自分の言い分や考えを解ってくれるものだと思いがちです。しかし異文化コミニュケーションとはそうではありません。日本人が持っている常識とは全く違うところからスタートしないとお互いに理解できないし、不信感だけ生まれることになります。それが固執してしまっている日本人の方は、ここで頑張ろうと思っても、残念ながら良いネットワークはできません。ベトナムに来た以上、「郷に入れば郷に従え」という日本の言葉を思い出してみてください。まずは問題定義して、お互いが理解できる答えを見つけることです。そしてその方法を自分たちの決まり事にすることが肝心です。

松:私も他人事では無いので耳が痛いです(苦笑)
ちなみにサイゴン・スカイガーデンさんでは、どのような方法で異文化コミニュケーションを克服しているのでしょうか?

秋:僕も最初は分かりませんでしたので、既に上手くいっている日系企業の工場に見学に行ったりしました。そちらで拝見したのは、何千人といる工員の方々が無駄話もせず、効率よく作業に専念してました。その背景には従業員食堂の充実など、従業員の方々が楽しく働けるような工夫が随所にありました。僕はサービス業でも同様なことができないものかと考え、ISO9001(品質マネジメントシステムの国際規格)を取得しました。あとは、個人レベルで持っていた規則やお客様からのクレーム、またはクレームへの対処策などを共有できるデータ・ベースを作りました。

松:データ・ベース...?
具体的には、どのような物ですか?

秋:従業員が何時でも見れるようなドキュメント・ファイルをベトナム語で作りました。今ではかなりの量がありますよ。また、見るだけではなくその問題を解決する上で必要な事を先輩や上司に相談しながら共に考えるようにしています。そして問題には迅速に対応する事を、いつも口をすっぱくして言ってます(笑)。言わば、仕事の中から自分のすべき事を学んでいるような形ですかね。「On The Job Training」と言いますか、「見える化運動」と言いますか、みんなで考え、みんなが納得するような答えを出し、みんなでルールを決め、みんなで実行する。勿論、僕も彼らと同じ目線になって、話し合いに参加してます。

松:国や上下関係を度外視したコミニュケーションが必要とことですね。

秋:「みんながHappyになるために、あなたは何をするべきか?」と、僕は従業員に問いかけますが、それがサイゴン・スカイガーデンのテーマのひとつでもあります。従業員のあなたがお客様から良い評価をいただければ、お客様も従業員のあなたもしあわせな気分になれるのです。サービス産業は「人」と「人」とのアナログの世界ですから、それが一番必要な事かもしれませんね。

松:今さらなんですが、秋末社長の仕事に対するモットーをお聞きしてもいいですか?(遅ッ)

d1_3.jpg 秋:マネージメントの観点から言いますと、やはり売り上げをのばし株主の方々にきちっと配当するというのがひとつの基準です。しかし会社というひとつの組織は、社会の中でうまく生き延びていかなくてはなりません。その為には周りとの協調を大切にし、何かを社会に還元するという気持ちを大切にしています。人間も会社もひとりではどうにもできない事があると思いますし、周りからのサポートがあってこそ上手くいくのだと思います。現にサイゴン・スカイガーデンのプロジェクトは、住民の方々、テナントさん、出資していただいているみなさんのサポートがあってはじめて成り立っているのですから。ただ、そのサポートを生かすも殺すも、その時々の社長さんがいかに適切な目標を立て、それをこなしていくかだと思います。とはいえ、自分ひとりだけが奮闘しても上手くいかないわけですから、相手側とのコミニュケーションが必要となるわけです。そしてそこから生まれる信頼関係が協調を生み出すのだと考えます。私は常に「Clean & Honest」という考えを従業員に徹底して教えてます。清らかな気持ちで誠実に物事に接する事が大切という意味合いですが、お客様からの信頼を得るには、まず安心していただけるサービスを提供することですが、その為には起こりうる問題に誠実に一生懸命取り組んでいる姿勢を観ていただく事が必要です。

松:「清く・正しく・美しく」ということですね?
宝塚みたいですね(独り言)

秋:私たちの仕事はお客様の住み良い住環境を作ることが最重要です。しかし、「自分」や「従業員」だけに求めるのでは無く、「お客様」にも求めることで達成できることもあります。例えば、ゴミの分別などですね。双方が協調することでみなさんの住みやすい環境が作りやすくなることもありますし、分かち合いの気持ちから暖かい生活環境が生まれると考えます。また、資源を大切にするという意味では、社会貢献の一環となりますし。より良い住環境を目指すことは、私や従業員にとって永遠のテーマでしょうね。

松:秋末社長はベトナムの将来に何かの可能性を感じているのでしょうね。

秋:アジアの国のなかでも健全に成長していく国だと思ってます。ベトナムの人々は戦争や内紛などの悲しい歴史の中で、とにかく生き抜くことが精一杯だった時代があるわけです。自分を守ることだけが一番必要だったそんな時代から開放された今では、海外からのIT文化や携帯電話などの新しい技術が、まるで未来から飛び込んでくるようにここにやって来てきました。ですから、庶民の生活もここ10年間でだいぶ変わり、ホーチミン市では富裕層と呼ばれるような収入を得る人々も増えましたよ。今ではここホーチミン市のバイク台数は460万台と言われてますが、人口が約720万人くらいですから、2人に1人の割合で所有していることになります。という事は、大人はみんな持っているということですよ。そのおかげで、もの凄いトラフィック・ジャム(渋滞)や、必要も無いのに鳴らしているように思われるクラクションの音に、日本人は皆びっくりすると思います。理由はとあれ、とにかく多くの若い人たちがバイクで行きかっている訳ですが、それだけの往来、言わば多くの若者たちの動きに大きなエネルギーを感じるんですよ。

松:日本とは逆に若者の数が多いんですか?
厚生労働省が聞いたらうらやましがりそうですね(笑)

秋:日本のようなシニア層が多い人口構成になるには、まだ50年はかかるんじゃないかな。
いろんな面で出遅れていることが、急速に何かを catch up しようとしているのと、インフラの整備などもここ5~10年間でだいぶ変わると思います。そうなると、さっき話した交通の流れなども変わりますから、所得なども3倍以上になるでしょうね。という事は、今までに経験したことの無いような急激な変化がベトナムに起こると思ってます。
バンコクやジャカルタなどで過去20年間かかった事を、ベトナムは10年間で達成する と思いますよ。

松:お話を聞けば聞くほど、ここベトナムではいろんな経験や想いをされたのだと思いますが、今一番心に残っている印象的な出来事って何ですか?

d1_2.jpg 秋:やはりISO9001を取得する為に、従業員が一丸となって頑張った1年間でしょうね。僕のコンセプトは、日本人にとって一番快適なアパートメントを目指すことでした。と言うのも、日本人がベトナムに進出する際、一番苦労するのが日本人の方々が快適に過ごせる住居を手に入れることだからです。ですから、本来なら専門業者に委託するようなサービス管理を、サイゴン・スカイガーデンは自らの手で成し遂げようと考えたんです。この試みはサービス業では珍しいケースですし、僕も最初は手探りの部分もありましたから、「あの社長は何を考えているんだ?」と周りから言われた事もありました(笑)。しかし、お客様が安心してお住まいになられているのを見ると、あの時の苦労と決断は間違ってなかったと実感します。

松:前例が無い事にチャレンジすることは、多大な労力と勇気がいりますよね。ましてや、言葉や文化が違う外国ではなお更ですね。
将来ベトナムに進出する日本人や日系企業へ、秋末社長流のアドバイスを是非お願いします。

秋:やはり、自社の事業内容とベトナムのマーケットの特色を照らし合わせ、いろんな角度から分析をする必要があると思います。そして、どのようにして自分の弱みを強みに変えていけるかが鍵なのではないでしょうか。あとは、異業種という壁を乗り越え、進出している者同士で意見を交換し問題を解決する方法を見つける事も必要だと思います。ここで成功している会社やお店には、ベトナム流の成功術が必ず潜んでいますから。とにかく、少ない資金でベトナムに進出するのは安易にできますが、中途半端な気持ちで来ると早々に撤退することになりますよ。

松:私は思うんですが、少ない資金で進出できるというところに盲点があるですよね。

秋:現地に来て初めて直面する問題は思いのほか多いと思いますよ。

松:ベトナムでの将来の夢を教えてください。

秋:仕事面では、第2のサイゴン・スカイガーデンを作る事と、同様のサービスアパートメントへ対しマネージメント業務を提供することです。プライベート面では、自分の できる範囲で続けているベトナムの子供たちへの支援を続けてしていきたいと思って ます。嬉しそうな顔をした子供たちから言われる「ありがとう」と、先生から子供た ちが頑張っている様子を聞く瞬間に小さな喜びを感じます。

松:では、最後の質問です。
ずばり!ベトナムに関われたことは、秋末社長の人生に「プラス」になった事ですか?

秋:非常に人生を enjoy させていただいてます。社長という立場上すべてに責任をもたなければならないのですが、会社の方針に沿いながら自ら決めた事を従業員と共に進んでいけるなんて、まるで「人生ゲーム」をやっているようですよ(笑)。勿論、up・down ありますが、若い従業員たちと一緒に仕事をすることは「元気の源」だと思ってます。

松:ほんと、貴重なお話しをお聞きすることができました。これからベトナムに進出を考えている方々は必読ですよ!
秋末社長、長い時間ありがとうございました。

松:ほんと、貴重なお話しをお聞きすることができました。これからベトナムに進出を考えている方々は必読ですよ!
秋末社長、長い時間ありがとうございました。

という事で、これを読んでくださっている方々は、これでインタビューは終わりだと思いますよね? 実はまだ終わりません。ここまでお話しいただいたからには、秋末社長の私生活も参考にさせていただいちゃおうと思います。

秋:(笑)

松:見るからに、慣れない日本人には出歩くのも困難そうな街ですが、秋末社長はお休みはどのように楽しまれてますか?

秋:フットマッサージっていうのがあるんですが、僕はあれが好きですね。安いんですよ、90分で12~15USDくらいで、とてもリラックスできます。日本なら、かなり高いでしょ? 許されれば毎日でも行きたいくらいですが、そうはいきませんので、ときどき行ってます(笑)。あとは健康の為のゴルフと、メコンデルタなどに出向きローカルなベトナムを感じることです。

松:食事はどうされているんですか?私の知人で、赴任中は食事はいつも日本食屋に行っている方がいましたよ。(笑)

秋:朝食は自分で作りますし、土・日は自炊することもありますよ。ただ、外食も安くあがるので、近くにある日本食、中華、フレンチ、韓国料理、ベトナム料理などのレストランに行ってます。みんな美味しいです。それに、一人で作るのは逆に不経済だったりしますから。

松:秋末社長!公私共に大変勉強になりました。機会があれば、是非またお話しを聞かせてください。と言うか、必ずお願いします!!
フットマッサージを受けながらなんて、どうですか?(笑)


2度と来ることも無いと思いながら3年間生活したベトナムを後にし、一度日本へ帰国した秋末社長。しかし、数年後にはベトナムに戻ることを決意した。それは会社や家族と相談しながらも、ご自身の将来を見据えた上での選択だったという。そして「職場も楽しく」・「自分も楽しく」しようと思いながらの再渡越だったそうだ。私はその秋末社長の一言に、ベトナムの魅力をかいま見たような気がしてならない。

interviwe & write & photo : Matsuzaki

ISO9001:製品やサービスの品質保証を通じて組織の顧客や市場のニーズに応えるために活用できる品質マネジメントシステムの国際規格です。

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