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ベトナムに夢をかけた日本人たち
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ベトナムに夢をかけた日本人たち

第 3 回 : 小谷尚孝さん

-ロコファクトリーはベトナムで頑張っている日本人を応援します-


今回このコーナーにお招きした小谷さんとの出会いは、一度日本に帰国した私が自分の仕事を立ち上げる為に再度ホーチミン市に戻った時です。初めてベトナムに住んだ頃と同じように Room For Rent に住み始めた私は、フリーペーパーの広告を頼りに宅配弁当を注文したのですが、これが小谷さんとの初めての会話でした。こんな時、日本語でのやりとりがこんなに楽なのかと安堵したのを今でも覚えてます。突然のインタビューを申し込んだ私を待っていたのは、変わらない小谷さんの笑顔とあの頃食べた弁当でした。

kotani_1.jpg 名前  :小谷 尚孝(こたに ひさのり)さん
年齢  :40歳(2011年現在)
出身地  :三重県
職業 :OFFICE ZIPANG 代表
初めてのベトナム:1995年
ベトナム在住年数:16年(2011年現在)
ベトナム在住地 :ホーチミン市


 

 


「なぜベトナムじゃなければダメなのかを明確にする事が必要!」


松:小谷さん、ご無沙汰してます。
今日は私どものLOCO★VIETNAMの「ベトナムに夢をかけた日本人たち」というコーナーのインタビューでお伺いしました。

小:松崎さん!お腹空いてない?

松:はい、空いてます。

小:とりあえず、うちのお弁当でも食べてからにしないですか?

松:本当ですか~?
実は当時の事を思い出す度に、こちらのお弁当が食べたくなるんでよ。

小:そう言えばあの頃、松崎さんがご自分で営まれていた美容室のチラシを、当店の弁当に入れて日本人のお宅に宣伝して欲しいという相談を受けましたね。

松:はい。宣伝したい人に、宣伝したい事をピンポイントで伝える方法を考えていましたので、日本人の方… 特に女性にインフォメーションをお伝えするには小谷さんのお店の宅配は絶好の手段だったんです。

小:メディア関係の方はチラシひとつ配るにしても、そこまで考えるんですね。


-------------- と、まあ世間話をしながら弁当をたいらげた後 ------------------


松:ごちそうさまでした! 当時の事を思い出しながら美味しくいただきました。お腹もいっぱいになりましたので、早速インタビューを開始したいのですが、まず小谷さんの経営している OFFICE ZIPANG についてお話しいただけますか?

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小:OFFICE ZIPANGは壮大な名前とは逆に細かい仕事もこなしてます。メインの業務は駐在されている日本人のご家庭に食材やお弁当の宅配する仕事です。経営しているとは言っても、ベトナムの法律では外国人が小売店の社長になるのは難しいので、登記上は嫁が社長という事になってますが(笑)

松:業務の内容をもう少し具体的にお話しいただけますか?

小:例えば、すき焼きの肉をお届けしたり、生姜焼き弁当をお届けしたりというような事ですね。日本で言えば、生協(コープ/COOP)と、ほっかほっか亭弁当のデリバリーを合わせたような業務形態です。

松:小谷さんは15年もベトナムに住まれてますが、ベトナムに住み始めた日本人の中では早い方じゃないですか?

小:僕より古い方はもっといますよ。ベトナムが外国人を積極的に受け入れるようになってからのタイムラグはありますが、多分 17〜18年お住まいの方が一番長く住まれている方々ではないでしょうか。それ以前に仕事などで来られていた方などは、最初にベトナムを訪れてから20年経つという大先輩もいらっしゃいます。あと、もっと長く住まれた方で、元・日本兵でこちらに居残った日本人社会の大長老みたいな方もいらっしゃったようです。

松:ベトナムに来るきっかけは何だったんですか?

小:父親の営んでいた貿易会社の駐在員としてベトナムにやってきました。

松:初めて訪れる前のベトナムのイメージは?

小:学生の頃に観た映画「プラトーン」や「グッドモーニング・ベトナム」のイメージしかありませんでした。

松:具体的に言うとどんなイメージですか?

小:すげ笠をかぶったゲリラがわんさか居て、今でも戦争をやっているようなイメージでした。あくまでイメージですけどね(笑)。あとは、グルメ漫画で紹介されていたベトナム料理を見て、美味しい食事がたくさんありそうな… と。ただ、その頃は自分がここに来るとは思ってもいませんでしたので、そんなに真剣にベトナムのことを考えてはいませんでしたよ。持っていたイメージは、ほぼゼロに近い状態だったと思います。

松:実際に来てみてベトナムはどうでしたか?

小:空港について最初に中心地に向かう途中、既にビックリする事ばかりでしたね。その頃から道はバイクでびっちり埋めつくされ、交通ルールなんて無きものとしてバイクは走っていました。それは15年経った今でもさほど変わってませんけど(笑)
あと、ベトナム人の方は、良く言えば 馴れ馴れしい、悪く言えば あつかましいで…。

「自分は、なんてところに来てしまったんだ」と、思いましたよ。

松:すみません、小谷さん!
「良く言っても」・「悪く言っても」、あまり良くないコメントみたいですが(笑)

小:ん~ッ。
では、良く言えば 人懐っこい という事で(笑)

松:ひときわ力強いコメントでしたが(笑)
それだけインパクトのある事が多かったんでしょうね。

松:奥さんと従業員の方々と、小谷さんはベトナム人と日々の生活を共にしてますが、
ベトナム人と日本人とではどんな違いはありますか?

小:ベトナム人の方は、あまり先の話はしないです。
日本人には「今日辛い事を頑張れば、明日には良い事が訪れるかもしれない」というような考え方がありますよね? しかし、ベトナムの人は、先の事より目先の事を重視しているように感じます。「先の約束は守られないからもしれない」・「先(未来)があるか分からないじゃないか」というような事なんでしょうね。「損して得とれ」みたいな考え方は全くありません。それだけ現実主義なんだと思いますが。

松:それはプライベートでも?

小:話は少々それますが、例えば「100万円有ったら何に使う?」なんて、日本では日常的に話しますよね? しかしこちらの方は「実際に手元に100万円無いんだから考えても仕方がないじゃないか」と言い返されてしまうので、話しが膨らまないんですよ(笑)。
更に「もしもの話しだよ」と問いかけると、「じゃあ、今から考えるから、とりあえず100万円くれ!」と言われてしまいます。笑い話のようですが実際の話なです(笑)

松:その様な考え方は他の諸外国にもありますよね。
ただ、そういう考えの裏には、それなりの時代背景もあったのでしょうが…。

松:ベトナム人と仕事や生活をする上での問題と解決方法を教えてください。

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小:日本でもベトナムでも仕事には問題がつきものです。
ただ、日本と違うところは、ベトナムで起きる問題は、しょうもない事が多いんです。例えば日本の会社では仕事の為に多少の我慢は付き物と考える従業員がほとんどだと思います。しかし私が雇用したベトナム人従業員の中には、ただ仲が悪いという理由だけで就業中に殴り合いの喧嘩とか始めた者がいました。大の大人がですよ。もうそうなると修復は難しくて、どちらかが仕事を辞めるか、状態が悪ければ2人とも辞めてしまいます。その従業員が重要なポジションで働いていた場合、経営者としては些細なトラブルで大きな問題をかかえる事になります。日本なら元の鞘(もとのさや)に収める方法はあるのでしょうがね。

松:日本人宅への配達が多いと思いますが、どの様な点に注意していますか?

小:ベトナム人従業員ごとに向いている仕事・向いてない仕事 がありますので、その点を見極め仕事の割り振りをしています。ただ、ベトナム人にしか分からない事もたくさんありますから、私が理解や対処ができないような内容は、ベトナム人の妻が従業員を指導しています。お客様は日本人の方が多いですから、常に日本とベトナムの考え方の違いをうまくすり合わせできるように努力しています。

松:実は私もZIPANG さんにお弁当を配達していただいた事があるんですが、配達に来たベトナム人スタッフの方が、ちゃんとに挨拶ができたことに少々ビックリしました。
と言うのも、よくローカルのお店やレストランでは、店員さんに挨拶された事が無いんですよ(笑)

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小:最近では挨拶ができる店員も増えてきましたが、ちょっと前までは文化として根付いてなかったかもしれません。当店では配達時の「挨拶」と「お釣り」について正しい指導をしています。ベトナムでは細かいお釣りは渡されない事がありますが、日本では1円でも足りなかったら大変ですからね。

松:私はスーパーなどでお釣りの代わりに飴玉もらう事があります(笑)。
ZIPANGさんでは細かい点にも気配りをしているんですね。

小:ベトナムで暮らしている日本人の方にはストレスを多く感じられていると思います。
ここでのサービス業は、そんなストレスの引き受け場所というか、クッションになる事が必要だと感じています。

松:15年間この地に住んでいる小谷さんが感じるベトナムの将来は?

小:国土も人材も豊富にある国ではないで、日本から進出される全ての会社を中国なみに引き受けられるわけではないと思います。しかし、日本と違い社会や経済を動かしている方々が非常に若いので、何か国際情勢が動いた時に柔軟な対応ができる国だと思います。先ほどお話したように現実主義的な国なので、過剰に他人に期待をしたり幻想を持ちません。一言で言えばシビヤな国ですが、そこに若さとバイタリティーが加わり成長を遂げていける国だと思います。ベトナムと付き合う会社や個人の方は、ここで「何ができるのか」・「何ができないのか」をキッチリと見越した上で、この国と向き合うことが必要だと思いますよ。

松:なるほど!
この取材では私自身が勉強になるし、心に突き刺さるお話しばかりです。

松:15年間で一番印象に残っている事は何ですか?

小:結婚する前は親族では無いベトナム人をパートナーとし事業を営んでいたのですが、最終的に創設時の功労者であるそのパートナーと、最悪の形で別れなくてはならなくなった事です。

松:それはどんな?

小:お金の問題です。仕事を始めた頃は私もさほどお金を持っていませんでしたので、ベトナム人のパートナー達も献身的に協力してくれました。しかし仕事が起動にのってくると、いろんな事がぎく-しゃくし始め、最終的にはかなりのお金をもっていかれました。更に、それを見ていた他のスタッフたちも、その行為を真似し始めたんです。仕事を立ち上げる前からすごく親しくしていましたので、まさかこの人がそんな事をするなんて思っていませんでしたし、この人に裏切られるくらいならベトナムで事業をする甲斐も無いと思っていたくらいですから…。

松:同じようなお話しをいろんなところで耳にしますが、やはり文化の違いを双方で理解し合わないと良い関係は築けないんでしょうね。
でも、良いこともあったでしょ?

小:はい、勿論ありますよ。
一番は暖かいお客様に恵まれた事でしょうね。駐在員の方が帰国される際、後任の方に当店をご紹介していただいたりし、家ぐるみ・会社ぐるみでのお付き合いをさせていただいてます。

松:でも、後任の方に引き継いでくれるという事は、ZIPANGさんのサービスが認められているという事じゃないですか?

小:ありがとうございます。
そのお言葉に甘えず、常に努力をしていくよう心がけていきます。

松:これからベトナムを目指す日本の会社や個人の方へ、小谷さん流のアドバイスをください。

小:まず!

「なぜ、(進出先が)ベトナムなの?」

という事を、よく考えてから来た方がいいと思います。

松:なるほど。なぜ進出先はベトナムじゃなければダメなのかを明確にするという事ですね?

小:はい。ベトナムで出来る事は多そうに思われがちですが、私は意外と少ないと感じてます。例えば 服 を1枚作るとして、中国なら会社・工場・機械・布から人材まで必要な物は何でも山ほどあります。しかし、ベトナムで同じ事をやろうとした時に、ここでは、まだまだ手に入らない物がたくさんあります。ベトナムに来てから、必要な物を外国から輸入するなんて事になっては本末転倒ですからね。ベトナムで事業をやる事によって、その業務内容が利益を生むのか・生まないのか見極めてから進出することをお薦めします。

松:それに会社を作るにしても、登記はベトナム人の名義もしくは合弁ですもんね~。

小:何か問題が起これば会社ごと全てパートナーに持っていかれることも多々あるようです。信頼できるパートナーでも全てを任せきらず、自分でも会社の管理と確認が必要です。
もっともっと深いお話しもありますが、今日はこの辺で…(笑)

松:綿密な計画を立て周到な準備をして乗り込んできても、通り一遍ではなかなか上手くいなかいのがベトナムでの事業なんですね。

小:はい。
ここはベトナムという事を、常に頭に入れておいてください。

松:これからベトナムを目指す日本人が知りたい事のひとつですが、小谷さん流の余暇の:過ごし方を教えてください。

小:一昔前までは日本人同士が知り合えるような場所が無かったので、何かの会合がある際に顔を出してお酒を酌み交わすくらいでした。最近では日本人も多く住むようになりましたので、趣味のサークルがたくさんできました。昔と違いインターネットの環境や雑誌、日本のテレビなども観れるようになりましたから、さほど退屈はしません。
結婚前はよく飲みに出かけたものですが、今ではそうもいきませんので身体を動かす事を楽しんでます。

松:確かにベトナム人の女性はチェックが厳しいですからね〜(苦笑)

小:でもね、松崎さん。
こちらでは旦那さんの行動を必要以上にチェックするは愛情の明かしだと考えられるようで、逆にチェックされないのは愛情が冷めているという事らしいですよ。

松:なるほどね〜。だからタクシーに乗ると、ひっきりなしに運転手さんに奥さんや彼女から電話がかかってくるんだ(笑)
話しがそれてしまってすません。でも、とてもタメになりました。

松:ところで小谷さんは、どんな方法で身体を動かしているんですか?

小:空手をやってます。
こちらに来てから始めたのですが、今では駐在員の方やベトナム人の方々に教える立 場になりました。

松:食事は日本人にもあいますか?

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小:スーパーマーケットが歩いて行けるような距離にある訳ではありませんが、ベトナム料理以外にもいろんな国のレストランがありますので、食事には困らないと思います。日本ほど外食も高くないですしね。

松:小谷さんがベトナムで困ったことは?

小:ベトナムドンとUSD、そして日本円と3段階の両替が必要なケースがありますが、レートしだいでは割に合わないことがあります。あとは、どこに行ったら何が手に入るかという情報があまり無いので、こちらに住んでいる方々で情報交換をするのがいいでしょうね。


松:ベトナムでの将来の夢は?

小:夢もさることながら、家族をキッチリ養っていく事ですかね。

松:ベトナムと関われた事はご自身にとってプラスになりましたか?

小:今、こうして生きてられるんで、結果的には良かったと思います。
分かれ道に居る時には、それは分からないですしね。


バブルがはじけた日本を見切り、最後の賭けで目指したベトナムで追い打ちをかけるように信頼したパートナーに裏切られた。しかし挫折しかけた小谷氏を救ったのは、皮肉にもあとにした日本の人々だ。今、彼はこう言う。「この地で手に入れた最高のものは、支えてくれるお客様とベトナム人の妻と子供、そして従業員たちの温かさ」だと。ベトナムを15年生き抜くのいは簡単ではないと百も承知の小生だからこそ言いたい。小谷氏は僕の英雄です。

(interviwe & write & photo : Matsuzaki)

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